アメリカンスナイパーの感想!あらすじとネタバレ

映画

もう予告編を見た瞬間から名作感が漂っていた本作、
実際に映画を見てきたら、想像以上の作品でした。

本作の前評判についてはあちこちで語られていますから、
改めてモダンが書く事なんて無いのですが、
本作の特徴はとにかく、中東で今も起きている戦争のヤバさを
ガッチリ描写した点と、アメリカ人にとっての銃と名誉、
その危うさをキッチリ描写した点です。

wikiを見た限りだと、アメリカでも賛否両論あるみたいですが、
それは視聴者の政治的立場がかなり影響しているように感じます。

これって、日本人だから洋画という枠組みで見られますが、
もし、主役が自衛隊員でイラク派遣ネタだったらとても冷静に
見られたものではありませんよ(汗)

感情移入度が違います。

そして、戦地から衛星電話1本で家族と繋がってしまうという、
ある意味嘘のような現実。

劇中、戦場を移動中のカイルは妊娠中の妻と衛星電話で
通話している最中に攻撃を受けます。

衛星電話を取り落すと、戦闘にはいるわけですが、
電話は通話中のままです。

激しい銃撃や破壊音、怒号や命令が一気に流れ込んできます。

奥さんは突然夫が襲われたこと、
通話口から流れ込んでくる混乱した戦場音にどうしたらいいか
分からなくなって取り乱します。

ベトナム戦闘とか、それ以前の昔の戦争映画だと、
電話は専用の電話ボックスからしかかけられませんでしたから、
通話中の家族が戦場と繋がってしまう事はありませんでした。

でも、今は違うようです。
こんなの耐えられないですよね。

中東での戦争や、兵士の精神状態について踏み込んだ映画は
これまでにも沢山ありましたが本作は生々しさが段違い。

そして、ラストの救われなさ(と、モダンは解釈しました)。

絶対に見ておくべき一作です。

ネタバレ込みであらすじ紹介

さて、ここからはネタバレありなので注意です。

ただ、時系列はともかく、メモを取っていなかったので、
かなり間違ったところや端折った個所が多いです。

ご覧になる方におかれましては、
寛大な心でご容赦いただけますようお願い致します。

まず、主人公、クリス・カイルはテキサス出身のカウボーイ。

軍隊、それもネイビーシールズに志願します。

そこで地獄のブートキャンプを潜り抜け、一人前の特殊部隊員になります。

ちなみにブートキャンプというのはこんな感じ。

タブガイで鳴らしたカイルにしてもキツそうでしたね。

厳しい訓練を潜り抜け、ついに一人前のシールズになったカイル。
タヤと結婚の後、妊娠した妻を残してついにイラクへ派遣されます。

これが1回目の派遣です。
劇中、カイルは合計4回イラクへ派遣されており、
その都度メインストーリーが進んでいく形です。

そこでのカイルの任務はスナイパー。

離れたところから部隊を狙う敵を見つけて狙撃する事が彼の任務です。

当然、軍隊に入るまでカイルは人を撃った事などなかったのですが、
初めての「任務」のターゲットはなんと少年でした!

警戒中の部隊の前に女性と少年が現れます。
少年の母親と思しき女性は懐から対戦車手りゅう弾を取り出し、
少年に手渡します。

少年はその手りゅう弾をもって部隊へ向かって走り出すのです。

一部始終を狙撃銃のスコープから覗いていたカイルは、少年を撃ちます。
胸を撃ち抜かれて倒れる少年。

女性は悲鳴を上げて少年に駆け寄り、転がった手りゅう弾を持って
今度は自分が駆け出します。

カイルは冷静にこれも射○。
部隊に向かって投げつけられた手りゅう弾は狙いをそれて爆発します。

これがカイルの初成果です。

大抵のメンタルだったらこの出来事に死ぬほど葛藤するのですが、
カイルは結構あっさりとこの出来事を消化してしまいます。

なんだろう、感受性が鈍いのか、戦場の影響か・・・・・?

その後もカイルは狙撃で部隊をカバーして、その成功率の高さから、
英雄と呼ばれるようになります。

これが初の派遣エピソードです。

帰国したカイルですが、タヤとの生活になじむことが出来ません。
イラクでは戦争をしているのにアメリカは平和すぎるからです。

そして2回目の派遣エピソード。

アルカイダの幹部を追い詰める為にイラクの協力者を得るのですが、
実際に情報を手に入れるため協力者を訪ねると、
アメリカ軍と話をした、協力した!ということで虐殺者と呼ばれる幹部が、
見せしめに協力者の一家を襲撃しています。

ここが見てられないほど残虐です。

まず子供の足を電動ドリルでえぐります。

泣き叫ぶ子供、子供を離してと叫ぶ母親や家族たち。
そこへアメリカ軍がやってきて、虐殺者を倒そうとするのですが、
強力なカバーを受けていて、まったく手も足も出ません。

カイルも敵スナイパーに狙われていて、遮蔽物から飛び出すことが出来ないのです。

悲鳴と戦闘音が混じって画面は混乱の極み。

そして、ついに虐殺者はドリルを子供の頭に当てて・・・・。

その行為を止めさせようとしたイラク人協力者も撃たれて死亡。

アメリカ軍は情報を得るどころか、目の前で敵に見せしめ行為を成功させ、
協力者を殺されてしまい、目標としていた人物を目の前から逃してしまいます。

そして3回目の派遣エピソード。

その後、虐殺者のアジトを発見、これを急襲して遂に倒します。
この際、テロリストに協力していたイラク人をアジトのドアを開ける際の
弾除け(としか思えない)に使います。

アジトに拷問道具が並び、切断した体の一部が飾られています。

敵の残虐性を際立たせる演出です。(作為的に感じました)

戦闘終了後、巻き添えで命を落としたイラク人の遺体を担いで、
抗議のデモが起きますがこれも意に介しません。

その後カイルのパートナーも負傷、病院での治療を経て死亡します。

4回目の派遣では、敵のオリンピック級スナイパー、
ムスタファを倒す事が目的となります。

これが最後のエピソードですね。

壁を築いてテロリストがいる地域を封鎖しようとしているアメリカ軍ですが、
作業員が狙撃されているのです。

敵の狙撃距離はなんと1000m。1kmスナイパーですね。

カイルは作業員を狙撃しようとしているムスタファを背後から狙い、
約2kmの距離から狙撃して倒します。

その後砂嵐に紛れて撤退。
このエピソードを最後にカイルは除隊します。

除隊したカイルですがやはり一般生活になじめません。
カウンセリングを受けた時に、戦場での行為を悔いているのではなく、
仲間を救えなかった事を悔いていると告白。

凄いマインドです(汗)

どうりで同僚が戦争や正義に疑問をもっていても、
全く意に介さない訳です。

カイルは傷痍軍人のケアを始めます。

どうやらこの行為でカイル自身も救われて、
イラク派遣前までの快活な性格に立ち戻ります。

しかし、ラスト。

戦争で心に傷をおったある軍人のケアをするといって、
家を出るカイル。

銃でも撃ってから話をしよう、というカイルの声が妻(タヤ)に
聞こえてきます。

その後、画面は暗転。
カイルがケアしようとした軍人に撃たれて命を落とした事が
告げられます。

カイルの死を悼むセレモニーや遺体を運ぶ際の星条旗の群れが、
映し出され、無音のエンドクレジットが流れて映画は終了。

視聴後の感動とか泣かせようとか、名誉がどうとか、完全にむなしい。
ただ虚無感があります。

クリス・カイルという人物とイラク帰還兵によるPTSDを描いた作品だ・・・という
前評判はかなり怪しいですね。

印象が全く違います。

感想とまとめ

救えない!!あらゆる意味で!

なんというか、クリント・イーストウッド監督の厭世観が凄く表れていて、
本当に嫌な感じ。

以前は全米ライフル協会の会長だったとは思えないような作品です。

アメリカで議論百出するのもわかります。

まず大きな絵で眺めてみれば、結局イラクに大量破壊兵器なんて
ありはしなかったし、派遣を決める引き金となった病院虐殺の証言も嘘。

そもそも石油が目的だったと言われていますし。

だからアメリカ軍の兵士がどんなに怖い目にあって、障害を負って、
ヒドイPTSDに懸かっても自業自得と言えます。

むしろいきなり住んでいる町に爆弾が落ちてきたり、
兵隊が家に押し込んできて、銃を突きつけるとか
巻き添えになるとかイラク国民こそ被害者で、
そのささやかな抵抗が自爆テ○だと言えます。

それを安全で離れたところから撃ち殺してなんとも思わないカイル。

女子供まで命を捨てて仇を取りたいと思う程のですから、
もうこの怨みは100年は消えないのではないでしょうか?

小さな絵で見てみれば、アメリカが攻撃されて無実の人が犠牲になった!
テロリストをやっつけるぞ、という単純すぎる正義感で戦う善意のアメリカ人が
いるわけですが、結局は自分たちのやっている事に嫌気がさして来るわけです。

良心だって痛みます。

結局カイルは沢山の「敵」を倒しましたが、
平和な牧場の射撃場で心に傷を負った味方に撃たれて命を落としました。

それ以上の意味は全くないです。

※どうやら、彼を撃ったエディ・レイ・ルースは、
犯行当時ド○ッグを服用していたようです。

映画ではカイルについて英雄とか英雄の死みたいに、
飾り付けようとする世間を突き放した視線を感じます。

だからこそエンドクレジットは無音なのだと解釈しました。

全般的に兵隊のPTSDについての言及は少な目、
クリス・カイル自身の生き方についてフォーカスしています。

それと!

必要以上にイラク人(やシリア人)を残虐な人間だと印象付けようとしている
演出の意図を感じました。

特に虐殺者の下りは、いくらなんでも趣味で○問しているわけでないのですから、
切断したパーツを飾っておくとかありえないでしょ・・・・。

半裸の男を鎖でつるして責め○すとか。優雅だな(笑)

ドリルで子供の頭をえぐるシーンなどは見てられないほど悪意を感じます。

これってイラクを日本でイメージしてみれば分かります。

日本がテロの主犯だ!と名指しされて、大量破壊兵器なんて無いのに空爆。
町は破壊され、沢山の人が死にます。

その後でアメリカの兵隊が町にやってきては、テロリストを出せ!と家々を回ります。

映画では描かれていませんが、アメリカ軍はリクルートが難しくなってきて
リクルーターを雇ってグレーな手段で軍隊に誘ったり、
いわゆる精神のバランスを欠いた人物まで大量にイラクに送り込んで、
問題となっていたそうです。

彼らが何をやったかなんて簡単に想像出来ます。

これに抵抗しようと武装した「右翼」が現れて、
アメリカ軍と話をした日本人は非国民!とか言って、一般人を責め○す・・・・。

なんだこの状況!?

全部アメリカが悪いじゃないか。

明確なメッセージを打ち出していないから議論が白熱しますし、
実際に戦争帰りで傷を負ったりPTSDになった人が多いから、
この作品の衝撃は大変なものでしょう。

実際の人物を描いた作品ですからなおさらです。

そして、近々クリス・カイルを撃った人物、エディ・レイ・ルースの初公判が
始まるそうです。

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話題性があるのも当然ですね。

最後に

本作を見たのか、見てないで言っているのか分かりませんが、
この映画を持ち上げる事で日本がアメリカに追従して派兵できる
ムードを盛り上げるプロパガンダ映画だ!と言う人がいるようです。

自衛隊派遣の恒久法絡みですね。

もう、アホか、と。

この映画をみて、アメリカ軍兵士を自衛隊員に置き換えて
気分が盛り上がるハズがない!

むしろこんな世界に巻き込まれたくないなぁ・・・と思うのが
普通の反応ではないでしょうか?

追記

町山智浩さんの映画評はこちらです。

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