かくかくしかじか、漫画のネタバレと感想!東村アキコが日高先生に捧ぐ!

漫画

東村アキコ先生の漫画家自伝マンガも4巻目。
巻を重ねるごとに終わりが 見えてきて無茶苦茶切ない感じです。
5巻で完結かな?

この漫画、漫画家でも大学生でも美術家でもないモダンが読んでも
無茶苦茶セリフが刺さるときがあって、
流石は心理描写に優れた少女漫画家の自伝だと感動します。

 

現在の自分が過去を思い出してとつとつと語る、という スタンスで進んでいくのですが、
時々凄くツライ。

恩師の日高先生とのやり取りは凄く刺激的で読者としても 楽しめるのですけど、
当事者として不義理をしてしまった東村先生としては
脚色せずに作品にする作業は相当しんどいのではないでしょうか?

しかも、作品にするときに記憶を掘り出していくことで
今まで気付いていなかった恥を新たに見つけてしまうワケです。

あの時、あんな態度とって平気な顔してたけど、
今思い返してみると・・・・なんて事をやってしまったんだ~!

誰にだってやらかしてしまった過去はありますし、
そのほとんどは今更取り戻すことは出来ないし、修復不能なのです。

それを真正面から描いてしまうというのは、かなりツライはずです。

時折、シリアスなシーンのプレッシャーに耐えられなくなったかのように
現在パートが差し込まれて過去の自分をぶっ飛ばしたりしてますが、
できる事ならモダンだって8年前の自分をぶっ飛ばしてやりたい気持ちがあります。

きっと誰にでもあるかなり普遍的な気持ちではないでしょうか?
でも我々は作家ではないので頻繁に過去を詳細に思い出したりしないから、
過去の恥を忘れて無かったかのように生きていけるのです。

4巻のネタバレと今後の展開

重要なネタバレですが4巻のラスト。
日高先生が肺がんで余命4ヶ月という事実が明かされた時、 あ
、遂に来たって感じがしました。

だって1巻から明らかに過去の人になっていましたから、
日高先生との関係が何処まで続くのかとある意味ハラハラしながら 読んでいたのです。

東村先生にとって日高先生は引力が強すぎて、
自分の道を歩く妨げになりそうな位大きな人だし、
日高先生も教え子の中で東村先生を特別に思っていたのでしょう。

でも、新しい道を歩くために今の関係を壊すことが怖くて・・・・、
臆病な東村先生はその場を取り繕ってフェードアウトしようとしたけど
遂に決断しなければいけない時が来たのです。

5巻で東村先生がどんな決断をするのか凄く気になるのですが、
おそらく仕事を取って戻らなかったのではないかと思います。

いや、おそらくグレーな感じで手が空いた時、
何度かお見舞いとか、手伝い程度には戻ったかもしれません。

でも、看取る事は出来なかったと思うのです。

きっとそれが東村先生の悔いになって
本作のモチベーションになっているのではないでしょうか?

亡くなった日高先生へ捧ぐつもりで描いたと思います。

漫画ではありませんが、本作に似た小説があって
これは佐藤優さんという元外交官が執筆したものです。

政治批評や宗教学、その他のイメージが強い佐藤氏ですが
本作の繊細さは本当に素晴らしい。

是非読んでみることをお勧めします。

個人的な感動ポイント

かくかくしかじかを読んでいると、
描写の繊細さと作者の意識が 凄く響くポイントがあります。

4巻でグッときたのが長距離恋愛の彼氏を日高先生に紹介して、
先生が彼氏と芸術談義をはじめたところ。

このシーンで、日高先生が彼氏に「どんな絵を描くのですか」と
子供みたいに無邪気な満面の笑顔でたずねるのです。

この描写を見た瞬間、
2巻か3巻で東京に出てきた日高先生を アパートにほったらかしてた時の
罪悪感の描写が重みを持ちました。

先生はきっと教え子やその同級生達、
絵の仲間と芸術の話を したかったに違いないって。

確かにこういう心の機微を
「親の金で4年間遊びくらす美大生」に 分かるわけが無く、
大人になってようやく理解できるんです。

日高先生の笑顔と既に過去やらかしてしまった事。
この時点の東村先生は気付いていないのが、
また読んでいて苦しい。

今の東村先生だから「あの笑顔」を描いたのです。

そして、そこに一切モノローグをいれていません。

むしろ、先生に付き合わなくていいからに私にかまって、
という 無理解でウザい自分を描写しています。

分かっている今の自分が分かっていない過去の自分を描く。

ほんとに作家は凄いと思います。
そして、日高先生の教え子にEAT―MANの作者の 吉富昭仁先生がいたことにびっくり。

アニメ化もされていますし、名作です。
東村アキコ先生とは作風が違いますが、一読の価値はありますよ。

コメント

  1. 通りすがり より:

    はじめまして。4巻はレンタル待ちの私ですが、ネタバレは歓迎なので来ました。
    おがたちえさんという漫画家はご存知でしょうか。彼女もまた日高先生の教え子だそうですよ。『上京物語 そのころのちえさん』では、おがた先生目線の日高先生が描かれていらっしゃいます。東村先生バージョンとは少々違いますが。その内容はもしかして5巻のネタバレになってしまうかもしれませんが、良い読後感でした。
    もし機会がありましたら、読む事をお勧めいたします。それでは。

    • talk より:

      to 通りすがり さん

      え・・・上京物語ってのおがたちえさんも、日高先生の
      教え子なんですか!

      素晴らしい情報有難うございます。
      知りませんでした。

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