2巻で登場した謎の敵役の正体や目的、
エリアスとチセの関係について掘り下げるエピソードが詰まっています。
この第3巻ですが書店に行ったら特典付しかなくて、
結局キンドルで買いました(汗)
紙で買った1、2巻をキンドルで買いなおして、処分しないと・・・。
あー、面倒!何故特典付だけを置くのかと!
まあ、リアル書店の文句はここまでにして、まだまだ作品世界が広がりますね。
イングランドを中心にしたファンタジー要素だけかと、
思っていたのですがヨーロッパ全体の民俗学的ネタを取り込んでいます。
例えば3巻では例の少年の正体がオペラで有名なさまよえるオランダ人だと
いう事が判明します。
このさまよえるオランダ人、
最も有名なワーグナーのオペラでも不死である事が強調されています。
どうして不死なのかというと、悪魔に呪いをかけられたせいです。
オランダ人の名前は明かされていませんが、この船長は腕に自信があったらしく、
どんな嵐にも自分は打ち勝つことが出来る!と大言した事が、
悪魔が呪いをかけた理由です。
まあ、思い上がるな!的な理由でしょうね。
この呪いの為に船長は1年に1回しか陸に上がれず、
しかも本当に自分の事を愛してくれる女性が現れるまでは呪いから解放されません。
オペラのラストでは、ゼンタという女性が真実の愛を証明することで、
幽霊船は沈み、オランダ人とゼンタは天に昇っていくのです。
まほよめ、ではこの元ネタを採用せず、どうやら聖書由来のさまよえるオランダ人を
使っているみたいです。
聖書由来の方だと、キリストに十字架刑を処したローマ総督ピラトの部下の内、
誰かが、不死になって最後の審判まで生き続ける罰を受けています。
中世以降語られた伝説上の人物。
イエスを嘲り平手で打った罰として、キリスト再臨の時まで地上を彷徨うことが定められた。ピラトの下役カルタフィルス(Cartaphilus)だとも、
アハシュエロス(アハスヴェロス)(Ahashverosh)、最高法院(サンヘドリン)の門番、
エルサレムの靴屋、あるいはブタデウスという名だとも云われる。
16~17世紀にかけて各地に現れたという伝説も多い。最初の記述は聖オーバン大修道院(現聖オーバン大寺院)の
イギリス人修道士マシュー・パリスによるものである。1228年アルメニアの大司教が修道院を訪れた時、
修道士たちがキリストの受難に立ち会ったヨセフという男が生きているという話をしたところ、
大司教は自分も会ったことがあると応えたという。元はピラトの法廷の雑役夫でカルタフィルスという名であり、
イエスが法廷に引き出される時に、キリストを叩いて早く行くようにと罵った。するとイエスは「私は行く。おまえは私の戻るまで待て」と言った。
男はその後悔い改めて洗礼を受け、ヨセフと名乗ったが、
100歳になると、イエスが彼に語りかけたときの年齢である30歳に戻ってしまうのだという。
まよ嫁作中でもこんなシーンがありますし、彼は陸にあがっていますから、
こっちのネタを採用したのでしょうね。
もっとも、ワーグナーの方でも聖書由来の方でも、
さまよえるオランダ人はオッサンですから、
作中のような無邪気・残酷系の少年ではありません(笑)
もちろん、死体で遊んだりもしませんよ。
ナイスな解釈です!
他にもエリアスの本性が現れたりして、なかなかカッコイイ。
3巻での大きな変化は、ブラックドックがチセのペットになった事と、
チセの微妙な立場について、です。
主体性と自己の重要性の実感の問題ですね。
この自己の重要性うんぬんは日本語に訳すと、
かえって分かりづらくなる言葉の良い例で、
原語はfeeling of importanceと言います。
こっちの方がしっくりきますね。
そしてエリアス自身の問題については4巻で語られるみたいです。
最後に
魔法使いと嫁のフォーマットは異種婚姻譚ですが、
神話・説話の類をリライトしたものではありません。
むしろ、理解を深めていく事でお互いの欠けたところを補完するような物語に
なるのではないか、と思います。
モダン的にはキリスト教以前のヨーロッパ土着信仰ネタを拾ってくれるので
非常に楽しく読ませて頂いています。
3巻ではリャナンシーとかウィル・オ・ウィスプが出てきましたから、
次は長靴をはいた猫こと、ケット・シーが登場するかもしれませんね。
追記
妖精の名前を画像検索すると、見事にメガテンばっかり(笑)
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