読後の第一印象はなんだこの地獄!?って感じですね。
善悪はデタントの時代なんです。
冲方丁最後のライトノベルシリーズって触れ込みのシュピーゲルシリーズですが、
これのどこがラノベなんだよ!!
って内容の本作。正に地獄。善悪の彼岸。
ライトノベルと一般書の違いは何かというと、2chあたりでどうしようもない書き込みが
連続しますが、基本的には売り方の違いがジャンルの違いと言えます。
それ以外に、作品のパーツで分けられるという人がいたら、
ソイツは馬○か嘘つきなので信じてはいけません。
女の子が出てくるとか、アニメ絵だとか、挿絵があるとか、超能力や魔法があるとか、
ドラゴンや妖怪が出てくるとか、地の文が少なくてセリフが多いとか、
そういう分け方は無意味です。
だって、ラノベを名乗るレーベル以外にもそういう作品多いですよね?
ハードカバーの一般文芸書にも極端にラノベ的と言えるような作品は多いですし、
昔のラノベが一般書のレーベルから発行されたりもしています。
砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない、などは、最初はラノベとして売られていたと言われても
ピンとこない人の方が多いと思います。
それにラノベ認定するとか、ラノベだろこれ~(笑)っていう意見自体が、
ジャンルを一段下に見た非常に差別意識を持っているのでモダンは大嫌いです。
ラノベがどうとかいう人にはこれをプレゼント。
内容について(ネタバレあり)
もうほんっとに酷い(予想を裏切られた意味で)
最初の頃は様々な障害をおった少女が機械化して、
色んな事件を解決しながら自分自身の問題を解決していくのかなと、
思っていたのですが、そんなに簡単には行きませんでした。
物語があまりにも巨大化して、
特甲児童が抱える問題が巨大なある問題から派生している事が判明します。
そしてテロ組織がどうして高い技術を持ち、潤沢な装備を維持できるのか?
公権力の裏をかけるのかといったことのネタバレがあります。
なんとシステムを作った側の博士が生きていて、
自身の復讐や世界の調和の為に目的を遂行していたのです!
そりゃシステムを設計した人なら裏をかけるよね・・・・とか、
死んだと思ったら生きていたという少年漫画的なところで終わらせないのが、
冲方作品。
それぞれの動機が凄いのです。
まず、テオ・カラス博士。
自ら最後の義脳兵器となって祖国キプロスを取り戻し、
復讐と世界の調和の一部になるという修羅の覚悟。
「あの地での戦火は終わった」というバロウ神父に反論します。
「私にとっては始まりだった。私から家族と故郷を奪ったすべての者たちに、
過ちを教えなければならない。それが私の使命なのだ。
平和が暴力となるという事を。万人の抵抗を封じてしまうという現実の恐ろしさを。
奪われたものにとって、
争ってはならないという命令ほど苦痛をもたらすものは無いのだということを」
もう、反論不可能ですよね。
そして闇社会と光社会の調和の為に
カール・クラウスとなっていたルードヴィヒ・数馬・メンデル博士。
死期を悟ったメンデル博士は次のカール・クラウスにヘルガを指名するのです。
完全に光の側にいたヘルガですが、
善悪を飲み込み世界の調和のシステムの一部となるのでしょうか?
脳チップで闇マネーの管理人である枢機卿が目覚める事で起きる混乱を
防ぐために、事故を起こす!そして新秩序。
特甲児童や接続官、それぞれの葛藤や成長もさることながら、
善悪が調和している状態を保つためのシステムの一部となる事を承認するか?
それとも全く新しい真のブリリアントモデルで世界を救うのか?
おそらくコアになるのは鳳の記憶と冬真です。
鳳の脳内チップが大きな物語の焦点でもありますし、
冬真との小さな物語の中心ともなるでしょう。
デタントの状態って物凄く正しい現状維持なので、
ステップアップさせることが凄く困難です。
あー世界とか救いてぇ~って誰のセリフでしたっけ?
作品初期の伏線だとしたらどんだけ凄いんだって感じです。
最後になりますが、2巻で完結ってどこかで目にした記憶があったのですが、
最終巻などではありません。
3巻も超分厚い作品になりそうですね。
報いられざること一つとしてなからんことを。
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