狼と香辛料で有名な支倉凍砂さんがマグダラ以外にも小説を出していたとは、
知りませんでした。キンドルに入れて移動中に読んだらもう仰天!
これは無茶苦茶面白いです!
全三巻でかなりのボリュームなのですが一気に読み切ってしまいました。
もう大傑作!
ラノベの文法は踏まえていますが、内容の骨太さと言ったら・・・感激です。
久しぶりに新しい刺激を受けました。
あらすじとネタバレ
いったいどんな話なのかというと、舞台は開発で好景気に沸いている月面都市。
月面生まれの主人公ハルは株式投資で大金を稼ぐ野望を持っていて、
本来なら学校に行かなくてはいけない年齢なのに場末のネットカフェにこもって
ショートレンジの株式取引に熱中しています。
元金を2万モルから70万モル・・・1モルは10円程度のイメージですね・・、
にも増やしたハルですが元金が大きくなった事でこれまでの投資法に行き詰まりを
感じていました。
孤独にハングリーに投資を続けるハルですが、
寝泊まりしていたカフェがメンテになり、追い出される間、教会に厄介になります。
そこで出会ったのは数学の天才少女ハガナでした。
物語の走り出しはこんな感じで、支倉さん得意のボーイミーツガールかと思いきや、
内容は死ぬほどハード!
甘々なラブロマンスなんてほとんど無し。何しろヒロインのハガナちゃんは、
1巻ラストで姿を消してから3巻ラスト付近まで登場しないんですから(ネタバレ)。
1巻は株取引とインサイダー、2巻はエンロン、3巻はサブプライムローンと、
世界経済を揺るがした大事件を題材にしています。
個人的には2巻読了後はFX系のネタになるかと思ったのですが、
更に超スケールになったので感動しました。
これは多少なりとも経済系に興味がある人なら震えるほど面白いです。
インサイダー取引の情報を貰ったと思ったら騙されたとか、
循環取引で実体のない会社をデカく見せていたとか、
登記簿の土地を見に行ったら何も無かったとか・・・。
特に3巻、読者にはサブプライムローンだと光の速さで分かるのですが、
ハル視点では知り得ません。
疑り深く堅実なハルは地価の高騰で荒稼ぎしている人に煽られながらも、
こんなに上手い話は無い、おかしいと疑い続け、
それでも理屈の上では不審なところは無いので、
自分が時代遅れになったのだと認めてサブプライムローンに投資してしまうのです。
この流れを見てヤバいよ~とかホントに感情移入しました。
案の定、ハルはギリギリのところで気付いて逆張りをするのですが、
サブプライムローンが遂に破たんした時のカタルシスは凄い!
そしてせっかく手に入れた数百億モルを・・・おっとココは止めときましょう。
とにかく、絶対に読んでおいた方がいい小説です。
月面都市、天才コミュ障黒髪美少女とか貴族の令嬢などのヒロインを揃え、
ラノベの皮をかぶっていますが、
どう見ても2巻・3巻のハルは20代前半の男の思考ではありません。
株式に注力している自分は時代遅れなのか・・・とか、
3巻なんて40代半ばか50歳くらいの男にしか見えませんw
ラノベマーケットを対象にしているせいで内容と挿絵とのかい離が酷すぎる。
おすすめ経済系ラノベ
さて、ここでモダンオススメの経済系ラノベについて紹介します。
まずラノベ、ライトノベルの定義ですがこれはライトノベル読者層に
訴求するマーケティングを取っている作品とします。
これはトートロジーではありません。
内容でラノベと純文、一般文芸を分ける事は不可能だと思います。
内容で分けられるなら表紙とレーベルを買えただけで
一般文芸に移籍した作品の存在について説明が必要です。
モダン的にはラノベ的な売り方をしていればラノベという見解です。
因みに抑えるべき文法はいくつかありますが、代表的なのはこんな感じ。
- 主人公の年齢が若い
- アニメ絵(アニメ塗りでなくても)
- 典型的なヒロイン(美少女)
- ボーイミーツガール
- 舞台は架空の世界(現実世界のメタファーになっている場合が多い)
- ファンタジー・SF的なガジェットが登場する(メカとか超能力とか)
- ライトノベルのレーベルから出版される(電撃・ガガガ・富士見など)
これらのいくつかを押さえておけば何を書いてもラノベになるでしょう。
もちろん異論は認めます^^
それでは紹介します。
まずは狼と香辛料、支倉凍砂さんのデビュー作ですね。
架空の中世のを舞台に行商人と狼の化身ホロが旅をします。
通貨のデノミや約束手形から始まり、最後は通貨の発行まで物語が進みます。
主人公ロレンスとホロのかけ合いの妙が魅力的!アニメ化されました。
同じく中世でまおゆう魔王勇者。勇者や魔王が存在するファンタジー中世が舞台です。
これは貨幣経済そのものというより、もっと大きな歴史の流れを題材にしています。
こっちもアニメ化されましたね。
戦争と金、宗教、戦後処理、どうして戦争が必要なのかについて語った
魔王・勇者系の物語は初めてではないでしょうか?
暗黒の中世に光を!
こういった余りにも巨大な題材こそファンタジー世界のガジェットで語るべきです。
羽月莉音の帝国、これは読み始めた時は個人的にはそんなに・・・という感じでしたが、
1巻を読み終わってから個人的な評価がうなぎ上りになりました。
現実世界を舞台にしているのでどうしても物語抽象度的に、
ご都合的に感じてしまう局面がありますが、とにかく凄く読みやすい。
スケールが巨大化するのもオススメです。
最後にコレ。電撃SSガール。舞台は現実世界で金融系メインの作品です。
もうバッタバッタと世の中の欺瞞を切り裂いていくのが素晴らしい。
キャラクター的には天才ツンデレ美女とか妹系とか、
どっかで見たことがあるような属性ですが、中身は重厚。
銀行の信用創造に触れた作品は初めて見ました。
こんなのエラソーにしている一般文芸書でも読んだことないよ!
涼宮ハ○ヒで経済小説やったらこうなるだろうなって感じです(直球)。
以上、モダン的なチョイスでしたが如何でしょうか?
経済・金融・ビジネスに興味がある人は是非手に取ってみて下さいね。
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