【JKハルは異世界で娼婦になった】感想と的外れな批判や誤読について思う事

jkハル

Twitterで山本弘さんが批判していた事から存在を見つけた本作。これはかなり文学性が高いと思うのだけど世間の感想は違うみたい。ネタバレありでモヤモヤする点を整理してみました。

JKハルは異世界で娼婦になった、というタイトル通り本作は異世界転生のテンプレートに沿った「なろう系小説」です。

私はネット公開されている方を読みました。

※残念ながら現在は公開されていません。

物語の筋は単純。

小山ハルはどこにでもいる普通のJK。同じクラスの陰キャ男子の異世界転移に巻き込まれ、生活のために娼館で働くことになった。コミュ力と図太さを武器に、ハルは夜の異世界を生き抜いていく。異色の異世界転生小説、待望の書籍化!

オタク気質の男子の方は神様からチートスキルをもらって単純に無双し、主人公のハルはスキルをもらっていないので体を売って日々を暮らす。

ところが無能力と思われたハルは神様から超チートなスキルをもらってる事が最後に判明し、逆に調子に乗りまくっていたオタクの方は成長の限界が見えてきたことで落ちぶれていきます。

ハルは所属する娼館に降りかかった理不尽を力で解決。女たちを苦しめていた男どもはミナゴロシにされてハッピーエンド、という流れ。

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これだけの話だと、女をモノのように扱う男どもをスカッとぶっ〇してカタルシス、スカッとしたよねというだけの作品です。

実際、アマゾンのレビュー欄にはそういったイベントの筋だけを追っている人が多いですし、色々な理由でこの小説には価値がないという感想を言う人もいます。

異世界なのにシャワーが出てきたからダメとか、どんだけ浅いんだと。

私にしてみればどちらも作品の本質をとらえていないのではないか、と思えたので正月3日にこの記事を書く事にしました。

物語のコアは男女関係の絶対的な隔絶

この作品に文学性が高いと思えたのは男女の一番愚かなところを抽出して生み出されたような二人。

もちろん、陰キャ男子(千葉)とハルです。

二人の間には絶対的な隔絶があり、どちらもお互いを理解しようとする気は全くありません。

陰キャ男子側

チート能力で浮かれた千葉は見ていて痛々しすぎますし、有能になった俺を認めろ、愛せと傲慢になっていくには見るに堪えないですね。

彼の興味は自分が圧倒的に強くなる事ですが、魔王を討伐しようとは考えていません。

チート能力の余裕で人生を楽勝で過ごしたいだけの小物なわけです。

言い寄って来た女の子に手を付けてもマグロだからという理由で大事にしなかったり、千葉にとっての女は全て道具、性欲の対象です。

彼にとってのハルは無能力ゆえに体を売っている最底辺であるにも関わらず、自分を認めない生意気な女。

でも顔や体は好きなので他の客をとらないよう奴隷(専属のメイド的なものと説明されていますが)として近くに置いていきたいという対象です。

ところが、成長上限が思った以上に低い場所に設定されている事を悟り、うなだれていきます。

魔王討伐どころか闘技場のトップにすら立てないのです。

一緒に異世界転生したハルが自分を認めてくれない事に憤りますが、ある程度の力はあっても何もなしえず、最後まで陰キャっぷりを克服できず女の上で転がされる最後です。

ハル側

これに対してハルは無能力を装って娼婦として暮らしていますが、その裏には明らかにチート能力の余裕があります。

彼女が貰った能力は今まで寝た相手のレベルや能力(スキル)を全て自分のものに出来るというもの。

無数の客、兵士や騎士達、闘技場のトップを相手にした事で作品中、最強の力を持っています。

ゆくゆくは魔王を凌駕しえる能力であることは作中で魔王本人の口から語られていますが、彼女にはその能力を生かす気は全くありません。

最後の最後で本気を出したのは、同僚が無残に〇されたり、仲間に危険が及んだからです。

彼女は世界を救える能力があるにも関わらず、感覚的な好き嫌いを重視し、娼館という閉じた世界で同僚たちと仲良く暮らしたいのです。

ハルは異世界転生前からウリをやっていたので体を売るという事に引け目は全くありません。

そもそも、どうして娼館が兵隊に徴用されてひどい目にあうようになったのか、優しい兵士が女をモノとして扱うように変貌したのか?

その根源が魔王との戦争にあるという事に全く考えが至らないのです。

ハルにとって直接の知り合い以上の世界は無いのと同じ。

男の辛さと女の辛さ

ハルにしてみれば、兵士たちが娼婦を道具の様に扱うようになってしまった事情など全く理解する気はありません。

だから簡単に殺してしまいますが、このラストの展開でカタルシスを得ている人が多くて仰天しました。

男側にしてみれば、これから戦争で殺し合いをしなくてはいけないのだから、戦争用マインドセットを作る為に「優しい兵隊さん的なマトモな人」でいられないし、売られているのだからお金で買うという訳です。

命がかかっている男側は体を売る女側の事情など考慮する余裕がないのです。

男性視点からしてみれば、男の群れの同調圧力が暴走しているように見えます。まさに地獄。

常に女側目線で物語が進んでいくので「抑圧されている女性という被害者目線」「それでもしたたかに生きていく女達」になりがちですが、読者なのに男側の地獄の存在に全く意識が向かわない人はヤバいと思う。

この関係を端的に表しているのが陰キャ男子とハルです。

二人は全く相互理解できません。

実はハルが異世界転生してしまったのは、トラックに跳ねられそうになっているところを陰キャ男子がかばったからです。

結果として両方とも死んで異世界転生するハメになった訳ですが、ハルは自分を助けようとしてくれた陰キャ男子が死ぬほど嫌いなんですよ。

命を懸けて助けてくれようとしても微塵も愛されない陰キャ男子辛すぎ。

理由はもちろんキモイから。

彼は男性視点から見てもキモ過ぎるので仕方無いっちゃ仕方無いですが、二人の関係が壊滅的に悪いのはお互いに理解しあおうという気持ちが微塵も無いからです。

これが本作のテーマだと思います。

異世界転生パロディだとか、テンプレ展開への批判だとか、世界観が雑だとか、エロシーンがあるとか、女が男を〇しまくってスカッとするとか、フェミニズムとか、女子会トークとか、それでも一生懸命生きているとか、そういうのは全て枝葉の部分ではないでしょうか?

なろう系小説について

正直、これだけのフックをぶら下げてエンタメの皮をかぶった男女批判をしている小説がなろう系で出て来るとは意外でした。

どの視点に立つかによって物語の解釈や評価が変わってきますが、個人的にはかなり文学度が高い小説ではないか、と思います。

しかもフックが多いから商業的に成功しているようです。

なろう系は文字数の制限が無いのでどうしても冗長になりがちなのですが、本作の様に1冊で完結する作品が増えてくれると今後も楽しみに思います。

 

 この記事へのコメント

  1. 匿名 より:

    簡潔にまとめてあるので自分の中でモヤモヤしている所が少しすっきりました。ありがとうございます。

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