少女終末旅行6巻の感想|新しい文学とか詩の形態について

少女終末旅行6巻頂上 漫画

少女終末旅行が完結しました。単なる感想、というだけでなく色々な事が頭に浮かぶので整理のためにも記事にしてみました。

本当なら単行本を待って一気に読むはずだったのですが、アニメ放送終了から待ちきれなくて連載を追ってしまいました。

その為、ちょっと前には二人の旅の終わりがどうなるのか分かっていたのですが、単行本では数ページ加筆されています。

ウェブ連載だけ読むのはもったいないのでぜひ手に取ってみて下さい。

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さて、ここからはネタバレ込みで感想やら文学やらについて書いてみたいと思います。

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少女終末旅行の感想と終わり方

ほとんどの読者が想定していたように「これしかない!」って感じの終わり方だったので意外とは思いませんでした。

しかし、そのラストへもっていく数話が本当に凄い。

1巻から5巻までは二人が巨大都市を上りながら色んなものを見たり人と交流することで知識や経験を蓄えていくフェーズなのですが、5巻ラストで人類が終わる事が明言されてからは積んできたものを少しずつ手放していくフェーズに入ります。

44話でケッテンクラートが修理不能になってからはもう全て失っていくだけ。

チトとユーリの軽口の応酬も無くなって、どんどんチトが自分の内面を掘っていきます。

ここでユーリの内面を描写しないのは「何か最後のギミックなのかな」とも思いましたが、これはスレた読者にありがちな邪念でした。

途中、大事にしていた本を燃やして暖をとり、不要なライフルも捨て、暗闇の中で登った螺旋階段は途中で途切れ、ようやくたどり着いた頂上には空以外は何もない。

これ以上、どこにも行く事が出来ないし自分達以外は何もなくなってしまった二人は最後の食料を食べてから一緒に眠りにつく、二人の姿はどんどん遠ざかって行って巨大な世界だけが残る。

死への対処

タイトル通り、終末に向かってとぼとぼと歩いているような作品で悲惨な状況もユーモアで韜晦してきましたが最終巻ではキッチリを向き合う事になります。

ここは漫画という表現媒体を使った文学(詩)と宗教の領域です。

暗闇の螺旋階段を上がっていくとか、触れあっている世界が自分たちそのものみたい、とか、見て触れて感じられること世界の全て、とチトが言うのは明らかに仏教思想です。

※無明、輪廻、無分別、唯識など。

少女終末旅行6巻

しかも作中の都市で神と崇められていたのは環境汚染物質を食べるキノコエイリアンみたいな奴でしたから、二人には天国も無いんです。滅茶苦茶徹底してますよね。

作者のつくみず氏に仏哲の素養があるのか分かりませんが、日本のような仏教国の文化で逃れられない死という究極の問いを突き詰めていけば自然と出てくる思想だと思います。これが民族文化。

逆にキリスト者なら同じ状況でも「いよいよ苦しみ多い地上を離れて神の国に行く日が近づいてきた」と感じるに違いありません。

文学と漫画

漫画読みというか、漫画という表現媒体に限らずオタクの端くれとして常に感じている事ですが、文学とエンタメをジャンル分けするのは無理!

純文学とかヘソで茶を沸かすレベル。

しかも大分前から漫画という表現媒体のパワーは小説を上回っています。

いま、誰が「究極的な滅び」「生きている意味」「世界と自分」っていう大テーマをこれだけ多くの人に向かって堂々と発信できるでしょうか。

しかもアニメ化されるまで支持されて本作を読んだ人は絶対に一度は人生について考えるはずです。

何しろ作中でちらっと「意志と表象としての世界Ⅱってタイトルの本が登場していますから、つくみず氏の狙いは明らかです。

廃墟都市の中に二人がいるのではなくて、二人(作者)の感じるものが滅びゆく巨大都市として表現されているんです。

アニメと原作の理想的な関係

面白い事にアニメを見ると原作が更に深みを増すんですよね。

正直、アニメ化前に最初の3巻まで読んだときは少女版ブラムかな、と思っていてあまり興味をそそられませんでしたから。

BLAME!(ブラム)映画版の感想について

しかし、アニメになって作者の気持ちが音楽と映像の総合芸術で表現されると原作を読んだとき、急激に作品理解が増すんです。

これは少女終末旅行に限らず感じる事で、最近だと宝石の国やゆるキャンの原作とアニメが該当します。

両方とも原作だけを読んだときはフワッとした印象しかなかったのが、アニメになってイメージの情報量が増えるともっといい作品に見えてくる。

おそらく抽象度の高い作品はアニメ化で情報量を増やして具体的にする事で化けると思います。

※逆に情報量の多い作品はアニメ化には向きません。きちんと作るには大金と時間が必要です。

これは作品自体がアニメ化の影響を受けて引っ張られるのではなく、情報の受け手が変化するのだと思います。

情報の受け手自体が変容する事で作品からより多くの情報を取り入れる状態はこれまで何度も起きていたハズですが、自覚したのは今回が初めてです。

最後に

色々と思いついたことを順番に書いていったので取り留めなくなってしまいましたが、少女終末旅行が色んな事を考えさせる作品であることは間違いありません。

作者のつくみず氏のTwitterをチェックした限りでは現時点で次回作の予定はない様子ですが、同人活動は常に行っているようです。

コミティアとかコミケでつくみず氏の他作品も読みたいですね。

でも会場行くの大変だからメロンブックスとかで通販してくれないかなぁ。

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