劉慈欣「三体」の感想【ネタバレあり】

三体広告 小説

某所でハイペリオンを超える大傑作SFが中国で生まれたと聞き、噂の三体を読みました。ネタバレありの感想記事なので未読の人はご注意を。

ネタバレあり、とは書いたものの登場人物の名前をコピペしようと思ってWikipediaを開いたらほぼ全ての内容が書かれていてげっそりしてしまいました、なんだこれはw

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既に丸出し状態になっている作品にどれだけ遠慮すべきか微妙なところですが、ネット上にある感想とは違う切り口で作品を語りたいと思います。

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三体のアイデアの源泉

本作を読んで凄まじいと思ったのは冒頭に文化大革命の描写をいれたところですね。

文化大革命に巻き込まれて、理不尽や裏切りに翻弄され絶望した中国人科学者が偶然エイリアンとコンタクトに成功してしまい、人類のリセットをお願いするというのが事件の発端。

そしてエイリアン側も予測不能な運動をする3つの太陽が地表を焼き払うため、不定期に文明をリセットされるような母星にうんざりしていて、偶然コンタクトがとれた地球を侵略しよう、たどり着くまでに人類の科学が進歩しないように妨害をしようという・・・。

これが1巻時点の三体の物語の筋です。

こういう物語が中国から出てきたのはやっぱり易姓革命とか、文化的な背景があると思うんですよ。

中国大陸(シナ・・じゃなくてチャイナ!)は王朝ごとに歴史が分断されていますし支配民族も異なります。中国4000年の歴史とはいうものの、ぶっちゃけフィールドは一緒でも支配民族が違うので一貫性がないわけです。

そういう歴史の中で今は中国共産党がチャイナを支配しているわけですが、それに絶望したインテリの圧倒的上位者によるリセット願望みたいなものを感じてしまいました。

エイリアン側も母星が不定期な動きをする3つの太陽によって度々焼かれたり冷却される(数学の3体問題のせいで太陽の動きを予想できない)のにうんざりしていて、安全な星に移住したい、というより侵略したいと考えている。

しかもエイリアン(三体人?)の社会は度重なるカタストロフに対応して生き残るため、超管理社会になっていて基本的人権とか個人の自由という概念が超希薄なんです。

これも中国の人民っぽいですよね。

ぶっちゃけ人類側もエイリアン側も中国人の心の一部に見えました。中国で2000万部売れたというのも納得です。

そして圧倒的科学力のエイリアンの妨害に絶望するインテリと、そんな難しい事は知ったことではないという雑草的生命力に満ちた刑事(史強)が素晴らしい。

どんなに翻弄されても目の前の現実を掴んで生き抜いていくしたたかさを感じます。

日本だと無常観バリバリの百億の昼と千億の夜みたいな形になってしまって、気が遠くなるんですよね(汗)

多分中国人のエッセンスがSFの形に昇華されていて、しかも面白いのがヒットの秘訣かと思います。文句なしに面白いですし続きも買います!

SFマインドについて

まだ1巻しか出ていないので最終的な感想は分かりません。

ただ現時点ではハイペリオンや続編のエンデュミオンと比べると見劣りするとしか言えないところです。

ギリシャ哲学やキリスト教、禅思想まで取り込んだ綺羅星のようなテキストはイーガン以前のSFの総決算みたいなものだと思います。

・・・イーガン以降のSFは小難しくなりすぎるか個人的な問題にフォーカスしすぎじゃないかな。まあ科学技術がSFアイデアに追いつき追い越しているっていうのもあるけれども。

やはり三体では積み上げた思想のバックグラウンドが弱いのと、不可思議な現象のネタバレが全部「智子」によるものだと言い切ってしまったのが残念。

エイリアンが人間とほとんど同じメンタリティをもっていて地球上の政体と変わらないような社会を築いているのもちょっと拍子抜けポイントですね。

もっと人知を超えたレベルのカラクリがあるのかと思っていたのですが、案外古典的でした。

2巻以降はどうやってエイリアンが仕掛けた頸木をへし折るのか、というところが注目ポイントだと思いますが、それだけじゃありません。

安全な土地にいきたい侵略だ、絶望した全部リセットしてしまえ、自分は無力なんだ、という中国人の潜在意識のようなキャラクターがどう変わっていくかの見ものです。

久しぶりにSFらしいSFに出会えてよかったです。ホントに先が楽しみなシリーズだと思います。

どうやら2巻は面壁者というらしいのですが、これって達磨大師の事ですよね。

ってことは仏教とか中国禅の話が絡んでくるかな。

個人的には仏教クラスタなんでメッチャ楽しみですね!

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