さらざんまいの感想とポストエヴァとしての考察

アニメ

仕事でテキストを書いているとたまには趣味の記事を書きたくなるものですが、このところ忙しくて手が回りませんでした。久しぶりの更新です。

はじめてさらざんまいの1話、2話を見た時点ではあまりに濃い演出とメタファーの洪水に「このアニメ、只者ではない!」と思い、毎週追いかけるつもりでした。

ところが公私ともに色々忙しくなりすぎて、今になってようやく最終話までまとめて見終わったところです。

全編を通して見ると、当初感じたメタファーだらけの難解な作品という第一印象とはだいぶ違いましたね。後半はメチャクチャ分かりやすい。

なにしろ最終話でテーマを全部言語化してしまったので、作品テーマやメッセージそれ自体については語る余地がないでしょう。

どうやっても視聴者が誤読しようがない作品だと思います。

ただ他の人の記事を探しても元ネタとか時系列とか、あんまり自分の感じた事を言語化してくれている考察が無かったので自分で書くことにしました。

さらざんまいについて語るんだったら、最後に誰が生きてたとか、皿三枚とか、死後の世界とか三途の川がうんぬんとかより、繋がりたいっていうテーマをどう扱ったかにフォーカスすべきじゃないかなぁ。

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さらざんまいは旧エヴァンゲリオン以後の作品

最終話で言語化された作品テーマは「人間関係を築くことで色んな面倒があるけど喜びも共にあるから、繋がりたいという欲望を捨ててはいけない」というものでした。

(繋がりたいという)欲望は君の命だ!

コレ、旧エヴァンゲリオンでシンジがLCLから分離することを決めた後、また他人の恐怖や嫌悪感と向き合うことになったラストが思い浮かびました。

まさにオッサンオタクっぽい感想ですねw

エヴァ旧劇はシンジがアスカの首を絞めて気持ち悪い、と言われたところで唐突に終わりましたが、さらざんまいの場合は他者への嫌悪感を強調するより、つながりを持ったことによる様々な葛藤を引き受ける覚悟を持て、と叱咤される印象があります。

ケッピが欲望の河を渡れ!と見得を切って言いましたけど、さらざんまいで解釈がややこしくなるのは、一見すると愛と欲望を対照的なものに見えるように演出しながらも、その実態は表裏一体・同一線上のものとして扱っているからでしょう。

いわゆる欲望というと、単に自分勝手に〇〇したいというネガティブな印象があります。

これは毎回カパソンビとして退治されるので、欲望は悪いことってイメージがどうしても刷り込まれます。

実際毎回退治されるカパゾンビの欲望はみっともないものばかりですし。風呂の湯を盗むとか、蹴られたいとか変態チックですよね。

しかし欲望を手放すなとか、欲望の河を渡れといった時、繋がりたいという欲望を手放すな、とか繋がりたいという欲望の河を渡って人間関係の様々な葛藤を引き受けながら喜びを知れって意味なのでむしろポジティブな真意があります。

皿の表裏がア(愛)とカワウソ(欲望)になっているのと同じ。

人間関係がうざいなと思う事は多々あるのですが、その人間関係の中にしか素晴らしいものはないのです。

繋がりたいけど〇〇したい、というエピソードタイトルはまさにその厄介事そのもの。

色んな理由があって女装してたとか、友達が自分を性的な目で見てたとか、実は人を撃ったことがあって犯罪行為に加担しているとか、いろんな秘密や欲望を抱えながらみんな生きてる。

そういう厄介な人間に関わる事でいろんな面倒事があるけど、その先にしか素晴らしい事はない。

縁を切ってしまえば「つながらない はじまらない おわらない」引きこもりの世界に留まるだけでしょう。

自己嫌悪にさいなまれて自分さえいなくなれば全部丸く収まると尻子玉を差し出そうとした一稀や、いい加減疲れてきた悠があらゆる人間関係を解消して無に帰ろうとしたのを止めたのは人間関係あってのこと。

本人が望まないことをするのですから、まさにお節介以外の何物でもないのですがそういう積極的な人間関係を好ましいものとして描いているのがさらざんまいです。

全てがLCLに溶けた世界を知った上で、もう一度他者を引き受けると覚悟を決めたけどやっぱり拒絶されてつらいよね・・・っていう時点にとどまっている旧劇エヴァと比べると一歩先ですよね。

もしさらざんまいがエヴァ的なテーマに留まるのだったら「つながらない はじまらない おわらない」世界を選んでも誰も止めてくれず、そこから地力で復帰したけどやっぱり・・・って展開になったと思います。

人間関係の有無がシンジと3人組の大きな違いでしょうか。

演出について

正直、かなり人を選ぶし第一印象で切ってしまった人が多い印象があります。

ウテナやピングドラムに拒否感が無くてもユリ熊嵐とさらざんまいは厳しいって人はいるようです。

実際、全裸で波乗りしたり四つん這いの肛〇に突撃して尻子玉を抜いたり、半裸の男があえいだりするシーンがかなり多くあるので女性向け、しかも腐女子属性の作品と思われる事が多いかと。

前述の通り普遍的なテーマを扱っているので、特に女性向けというわけではありません。

アニメとしてもクオリティはかなり凄いし、視覚的な楽しみがあるのでホモ演出の目くらましに惑わされず見て欲しい作品ですね。

小説では色々と細かい事まで書いてあるらしいので、キンドルに入れておくつもりです。

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ただ実際読むかは迷うところです。

設定重視というよりメタファーのイメージ喚起力でメッセージを伝える作品の場合、言語化しすぎたり、余計な情報を入れると陳腐になってしまう事があるので作品の感想が変わってしまいそう。

自分の中のさらざんまいをアニメだけに留めておくか悩む所ですね。

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