このところストックしていたサウナネタばかりを投稿していたので久しぶりの漫画ネタ。戦争漫画にも色々ありますが、これまでにないオリジナリティのあるテーマがコレ。戦争凄いネタとか戦争悲惨ネタとは一線を画した凄さがあります。
売国機関のあらすじ
タイトルからしてドスで腹を刺すようなエグみがあって手に取らずにはいられません。幼女戦記もそうですけど、ファーストインプレッションの強さが凄いですよね。
物語は超大国に挟まれた敗戦国の戦後。何とか泥沼の正規戦は終結したものの国内には火種がくすぶっています。
終戦に不満のある者、戦後のどさくさで私腹を肥やす者、不満をあおって状況を変えようとする外国勢力・・・これは小国を揺るがすゴタゴタを武力で一掃する自称愛国者率いる秘密機関「オペラ座」の物語です。
まあスッキリした話じゃないですよね。
特に負けたとなると収まりがつかない人もいるし、一般人が大局を理解できるはずもなし。
戦争による惨劇を防ぐために自国民に銃を向けるという矛盾。
まあ幼女戦記と一緒で毒抜きに美女主人公でもなければエンタメにならないようなテーマです。
これをまじめに愛国心の強い帰還兵の男性将校がやったら華がないから悲惨過ぎるし、物語の解像度を上げざるをえないので地に着いた展開にせざるを得なくてスッキリしないでしょう。
ナラティブとしての戦争漫画
歴史書のようなストーリーではなくて、当事者としての個人が語るナラティブとしてのこれまでの戦争関係の物語って大きく分けると下記の3つになるかと思います。
戦争中・戦地の物語 | 戦争中・銃後の物語 |
両者の戦後から復興の物語 |
例えば戦争中・戦地だったら水木しげるの戦記物が代表ですし、戦争中・銃後だったらはだしのゲンとかこの世界の片隅にが当てはまります。
そして戦後に関してはあまり両者の区別なく語られてきた印象ですね。
戦後から戦争の物語
しかしこれからの時代に求められるのは戦後から次の戦争までの物語だと思うんです。
戦争が悲惨だって事はみんな理屈の上では知っているし、バカじゃないんですからその悲惨さが実感を伴っていない事すらメタ的に分かっているでしょう。
でも起きてしまうとしたらどんな状況なのか?
もちろん今後の戦争は世界大戦とは違う形になるでしょうし、既に経済戦争として勃発していてみんな戦っている最中なのかもしれないけど、実弾が飛び交うハードなコンフリクトが起きるとしたら、そこに至る気分とかシチュエーションこそ様々に語られる必要性があり、重要だと思うのです。
実際、なぜ戦争に突入してしまったか?という点について色々と語られてはいますが、それは全て筋道立ったストーリーです。
禁輸されたとか、賠償金が重すぎてとか、王族が害されたとか、歴史書はストーリーだから分かりやすく解説していますけど、それってどうなの?
結局のところナラティブとして語られていないので庶民としての自分には実感を伴わないんですよ。そりゃ国家のかじ取りをする人にはストーリーに意味があるかもしれないけれどさ。
接点がある老人世代に聞いてもよくわかってなくて雰囲気だったとしか言いようがない感じ。
だから色んな立場の人のナラティブこそ語り継ぐべき。時代の空気はナラティブの集合を俯瞰する事でしか理解できないと思います。
売国機関はまさに「戦争になるのはこんな状況や気分で」というナラティブをサディスティック美女と暴力、スパイサスペンスの糖衣でくるんだ作品だと言っていいんじゃないかなぁ。
最後に
幼女戦記の映画ネタでも書きましたけど、カルロ・ゼンの作品って状況と対峙して粘り強く改革しようとする意志を感じるんですよね。

革命みたいな劇的な展開にならず、出来るだけ易きに流れないように踏ん張る物語。
本来ならとてもエンタメにならないようなジャンルだけど、味付け次第では美味しく食べられる。
まあ、幼女戦記に関しては破綻してズルズル行っちゃってる展開ですけど(笑)
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